森・濱田松本法律事務所 RECRUITMENT

INTERVIEW

新しい法実務を
世の中に送り出す
難しさと喜び

石綿 学 GAKU ISHIWATA

国内外のM&A、コーポレート・ガバナンス、株主総会対応、会社支配争奪戦その他のコーポレート案件、プライベート・エクイティ、ファイナンス、危機管理その他会社法や金融規制に関する案件などを幅広く取り扱っております。

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企業法務弁護士となり、現在の専門分野を取り扱うようになった経緯を教えてください。

模擬裁判世界大会での経験

私が法律に興味を持ったのは、祖父の影響が大きかったと思います。幼少時代に同居していた祖父は、当時最高裁判所判事を務めており、法律は比較的身近なものでした。
弁護士を志す契機となったのは、大学時代に出場した国際法模擬裁判の世界大会でしたね。大会は、50か国以上が参加して、アメリカで開催され、私自身は、世界4ヶ国の代表チームと模擬裁判を行いました。私たちのチームはアメリカのロースクール生とあたってしまったことなどもあり、負けてしまったのですが、その時の悔しい気持ちが、将来法律の分野で、世界を相手に伍していきたいという気持ちにつながりました。

新しい法分野に関わるなら企業法務

もともと、資本主義社会においては、多くの人々が企業を通じた活動にエネルギーを投じており、また、企業の果たす社会的役割は非常に大きいと感じておりました。多くの人々がエネルギーを注いでいるフィールドにおいては、法制度や法実務が日進月歩で発展していき、刺激的で面白いのではないか、多くの人々が関わりを持つ企業の内外の活動に「法の支配」を貫徹することに社会的な意義があるのではないか、などと考えていたように思います。また、私の場合、世界を土俵に国際的な仕事をしたいという思いが強かったことも、企業法務を志すこととなった理由の一つであったように思います。

最初の案件は当時の最大規模

入所して初めて経験した案件は、当時史上最高の負債総額で破産した会社の破産管財人側について、その会社の優良な事業部門をM&Aで国内外の企業に譲渡するというものでした。破産に伴い事業の劣化が始まる前に、生ものである事業を生きたまま譲渡するというもので、先輩弁護士とともに密に取り組み、2か月程度で数千億の事業譲渡を完了しました。その後、大量に残った不良債権をまとめて売却していったのですが、それが日本初の不良債権の流動化案件となりました。いずれも、大規模かつ新規性の高い案件で、一から実務を創造していくという側面があり、とても印象に残っています。

入所直後は何でもやりたがり

入所直後はどんな業務であってもやってみたいと思う傾向にあり、積極的に様々な業務に関与しました。M&Aのほか、訴訟、倒産申立て、不良債権流動化、航空機ファイナンス、ファンド組成、ジェネラルコーポレート(企業の一般的な法律相談)など幅広い分野に関わりました。

案件の大きな流れを捉える

最初に経験した案件が大規模で印象的なM&A案件だったこともあり、その後もコンスタントにM&A業務に携わるようになりました。ただ、弁護士になって最初の3年間は、いずれの仕事にも特に自信があったわけではなく、何を専門にしていくのかについて悩むことも少なくありませんでした。そのような中、国有化された某銀行の売却案件に携わっていたとき、先輩弁護士が、何かしら大局的な判断が必要となる場面で、都度都度、後輩の私に意見を求めてきてくれることに気づきました。先輩弁護士とともに、案件の方向性について悩み、結論を出す中で、自分は、様々な利害関係人がいる案件の大きな流れを捉えていくことが好きなのではないか、と思うようになり、M&A業務を専門にしていく気持ちが固まっていったように思います。

今までで印象に残った案件は何ですか。

新しい法実務を世の中に送り出す難しさと喜び

最も印象に残っているのは、Citigroup Inc.と日興コーディアル証券との間の資本業務提携です。この案件では、米国の実務を参考に、独立社外取締役のみで構成される特別委員会を導入したほか、我が国初の三角株式交換などを実施しました。日本の上場企業の株主をまとめて外国企業の株主に変えることに伴う証券実務等、様々な悩ましい論点がありましたが、それをひとつひとつ乗り越えて解決していく楽しさもありました。また、この案件が行われた期間中は、リーマン・ショックなど、案件を巡る環境が激しく動いていたことなどもあり、Citigroup Inc.の経営陣もクライアントの経営陣もほとんど交代し、最初から最後まで案件を熟知しているのは、弁護士などの限定されたメンバーのみでした。そのような中、弁護士間の信頼関係で案件を実現に結びつけていくことの醍醐味や、新しい法実務を世の中に送り出していく喜びを経験しました。私は、幸いにも、上記のほか、多くの印象的なM&A案件に関わってくることができましたが、いずれも非常に貴重な経験になっているように感じています。

アドバイザーの重要性を実感

また、M&A案件では、過去に不利な条件で契約を締結してしまい、その経験を繰り返さないよう、当事務所に相談があったという経緯の事案もありました。この案件では、どのような代理人が付いているかで契約書の有利不利が大きく変わり得ること、特にM&A案件に慣れていらっしゃらないクライアントが当事者の場合、より顕著にアドバイザーの選択による違いが出てくることを実感しました。

会社支配争奪戦、買収防衛策への関与

それから、私は、買収防衛策を巡る理論的整理や法実務の構築に携わる機会があったこともあり、これまでに、数多くの企業の会社支配争奪戦や買収防衛策の導入案件などに関与してきました。会社支配の争奪をめぐる案件は、当事者の利害の緊張関係が極限まで達することがあるほか、会社法理論の限界が試されることが多く、学問的にも非常に興味深いと思います。また、買収防衛策の議論は、コーポレートガバナンスの議論の発展と密接不可分な関係があり、コーポレートガバナンスについて深く考えさせられる契機にもなりました。

コーポレートガバナンスの新潮流

ここ数年、我が国では、コーポレートガバナンスを巡る議論が非常に盛んであり、急速にこの分野が発展してきています。弁護士としても、指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社などの選択といった話にとどまらず、ガバナンスの実態面にまで踏み込んだアドバイスを求められることが多く、取締役会の運用方法、役員の報酬設計や指名のあり方、取締役会評価などの相談が増えてきています。コーポレートガバナンスの分野は、顔の見えない一般株主や市場と直接に言葉を交わすことなく対峙しなければならず、また、一義的な正解があるわけではない分野ですが、他方で、様々な支配権争奪戦で限界事例の経験を積んできたがゆえに感じるところもあり、今後、さらに積極的に取り組みたい分野です。

M&A業務に関する時代の変化は感じますか。

M&Aに対するイメージの変化

この20年間、M&Aを取り巻く状況やM&A実務のあり方は大きく変わってきたと思います。以前は、M&Aというと「企業の乗っ取り」というようなネガティブなイメージを抱く人がいたり、あまり前向きに考えない企業もありましたが、最近では、M&Aは、企業経営者が常日頃より経営の重要な選択肢の一つとして考えるものとなってきています。また、多くの企業がM&A経営の選択に取り組む中で、M&Aの内容ややり方の多様性も増すとともに、スピード感も増してきた、という印象です。

M&A専門とする弁護士が出せるvalue(付加価値)も変化

このような環境やクライアントの意識が変化する中、クライアントから求められるものも変わってきています。私が弁護士となった当時と現在とでは、契約書の内容、案件のスピード感、関係当事者のM&Aに対する理解や知識の程度は大きく変わりました。そのような中で、M&A専門とする弁護士が提供することのできる付加価値も変わってきていると思います。

日本におけるM&A法制の形成

米国におけるM&Aに関する法理論は、1980年代後半から1990年代にかけて確立されたといわれています。日本においては、これに遅れて2000年代半ばころから、会社法の制定やM&Aに関する裁判例が蓄積されたことなども相まって、M&A法制(特に支配権争奪に関わる法理論)が確立してきたように思われます。私自身も、2000年代半ば以降の多くの支配権争奪戦や、M&Aに関わる訴訟その他の紛争案件に関与し、新たな論点を解決していく中で、微力ながらもM&Aに関わる法実務の形成に寄与してきたという自負があります。もっとも、現在の日本のM&A法制が完成形であるとは全く思ってはおらず、これをさらによいものとするべく、進化させていかなければならないと考えています。

今後M&A分野はどのようになっていくと思いますか。

時代の変化に合わせて価値を提供

先ほど述べたように、M&Aに対する世間のイメージも変わり、M&Aに関する知識やノウハウも広くシェアされる時代になりました。その中で、弁護士には、それを前提とした新しい価値の提供が求められています。例えば、スピード感を持って的確な助言をしたり、タイムリーかつ効率的にエグゼキューションしていく能力が求められます。変化の激しい時代の中で、当局の解釈や運用に関する最新の情報を活用していく力も求められます。このように、M&A分野では、時代の変化に合わせて価値を提供していくことが必要になります。

クロスボーダーM&Aや国際的な案件の増加

昨今、我が国においては、少子高齢化で国内市場の先行きが不透明な中、海外の企業の買収を志向する企業が増えています。海外の企業の買収に際しては、日本企業の常識や慣行が通じず、また、交渉難易度も高いことから、これを実現していく弁護士の交渉力、ドラフティング能力、リスク感覚などの重要性も増します。そのような場面では、自分にかかる負荷も大きく、胆力が求められる一方で、新しい発見もあり、非常にやりがいがあります。大きな国際案件を担当すると、その案件を通じて自分自身も成長できたことを実感することが多いように思います。
また、海外でこれら世界のM&A経験した日本企業が、その経験やノウハウを再度日本に逆輸入することにより、日本のM&A実務が発展していくという側面もあります。
日本企業が、クロスボーダーM&A経験していけばいくほど、日本のM&A実務もまた発展していくことになります。弁護士としては、国内案件のみならず、国際案件に関与することが、グローバル化する日本企業を適切にナビゲートしていくことにもつながることになります。

謙虚かつ誠実に

何よりも謙虚かつ誠実であることが最も重要であると思っています。弁護士の仕事を適切にこなしていくうえでは、関係当事者の話を聞いて、その意図や真意を正確に理解することが重要です。そのためには、慢心してはならず、謙虚かつ誠実な姿勢を欠いてはいけないと考えています。この基本的な価値観を大切にしながら業務にあたるようにしています。

社会の役に立つ

最終的には、一人の弁護士として、できる限り社会の役に立ちたいという気持ちがあります。「役に立つ」方法としては様々なものがあります。社会的な意義も考えながら通常の業務に携わることに加え、例えば、政府や地方自治体が法制度や法執行を整備することを支援したり、法教育機関のサポートなどもあります。実際にも、私は、政府や地方自治体のアドバイザーなどを引き受けさせて頂くことも多く、また、10年近くロースクールの講師を務めてきました。また、自分の経験に基づき、積極的に研究・執筆活動を行うことにより、日本の実務の改善に努めたいという思いも強く持っています。私は、経済産業省や金融庁などの委員会の委員を務めてきましたが、それもその一端であり、今後も進んでそのような活動を行いたいと思っています。

弁護士になる人に一言お願いします。

有機的に動いて
複雑な案件に解決策を提示

MHMは、様々な才能が有機的に集っており、チームワークも非常によいため、全体として一つの生き物のように有機的に動くことができる事務所です。そのような事務所であるからこそ、前例のない難易度や複雑さを抱える案件に対して、クリエィティブな解決策を提示していくことのできるようになるのです。今後、我が国の不可欠なインフラの一部として、クライアントや社会が抱える問題に解決策を提示し続ける集団であり続けたいと思っています。そして、そのような集団の一員として働くことに誇りを持ち、強い責任感を持っている方と是非一緒に働きたいと思っています。