当時、資金決済法を専門にしていた弁護士は事務所内にいなかった
入所してから7年目に、資金決済に関する法律(資金決済法)の立法に関与するということで、金融庁への出向の話をもらいました。その当時、主任として担当していた訴訟案件が非常に面白く、また、徐々に自分一人に任されるような案件も増えてきて、最後まで自分の案件に携わりたいという思いもありました。一方、入所以来、留学や出向に行ったことがなかったので、事務所の外の環境に触れてみたいという気持ちもありました。先輩方の後押しもあって、新しいことをやってみたいと思うようになり、金融庁への出向を決意しました。
私は、2008年から、金融庁総務企画局企画課調査室(その後、同課信用制度参事官室)に1年4か月間出向しました。出向した当時、金融審議会第二部会の下で開かれていた決済に関するワーキング・グループの最終段階で、私は、まず資金決済法の立案作業を担当し、その後、資金決済法の施行に向けて、政府令の策定作業のほか、監督局で担当するガイドライン策定や、資金移動業者の登録審査等に関与しました。出向先ではチャンスがあれば様々な業務を行いたいと希望していたので、金融庁では、犯罪による収益の移転防止に関する法律を担当したほか、民法(債権法)改正や会社法改正に関する審議会が発足すると、その準備や随行もしました。
出向先の部署には、たまたま私以外弁護士がいなかったこともあり、出向者かどうかに関係なく、多くの業務を担当させて頂きました。たとえば、国会議員への質問取りや答弁作り、金融庁長官や幹部への説明レク等も担当しました。初めての経験でしたが、上司やチームのメンバーの指導の下、当然立法過程にも深く関与し、全ての金融庁所管法令を確認・整理しつつ、法律案の原案を作成していきました。法律が成立した後も、法律よりも分量があり業界調整も大変な政府令の策定作業、ガイドラインの策定作業等を行いました。法律の立法作業に比べて担当者も少なく、業界調整も法制局対応も行って、とにかく大変でしたが、その分やりがいもありました。