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井上 ゆりか 弁護士(2016年登録)

私は2017年1月にMHMに入所し、M&A・コーポレートを中心に、ヘルスケアの業界や規制に関する業務にも携わってきました。そして2021年8月からはシカゴ大学のLLMプログラム(Master of Laws)に留学しており、あっという間に数か月が経ちました(この原稿を書いているのは、2021年12月です。)

留学を希望した理由

私は、大学・大学院を含む10年間を米国で過ごしたため、入所前から英語でも法律を学んでみたいとぼんやりとは考えていました。そして、留学帰りの弁護士が、留学時に知り合った海外の弁護士と楽しそうに電話会議で話しているのを聞いてからは、自分も将来そのような人間関係を築いて仕事をしたいと憧れを感じ、留学に向けた想いを強くしました。また、私自身の業務との関係で留学の必要性を感じたことも留学を希望した理由の一つです。
M&A・コーポレートの業務においては、年次があがるにつれて、外国人の方に英語で説明する機会が増え、また、米国法との比較の観点から質問を受けることも多く、米国法を学ぶ必要があると感じていました。また、ヘルスケアの分野においては、日本の規制が欧米の規制を参考に策定されているため、留学先でヘルスケアの規制も学ぶことで、今後の業務に幅と深みを持たせることができると考えました。
ここでは、シカゴ大学のLLMプログラム、シカゴの街、そして留学に対する私の考え方についてお伝えしたいと思います。

シカゴ大学での学生生活

シカゴ大学のLLMプログラムの概要

LLMプログラムは米国以外で法律を勉強した人向けの1年間のプログラムであることから、学生の殆どが米国以外で弁護士としての実務経験を経た後に参加しています。弁護士といっても、法律事務所・インハウス・政府といったように所属は様々であり、かつ、元々所属していた職場に戻る学生・米国で就職を希望する学生といったように、出身国ごとに大まかな傾向はありますが、将来の目標も人によって様々です。
シカゴ大学では、実務に近い授業が幅広く提供されています。私は、今学期、企業のコンプライアンス・オフィサーが教えるCorporate Compliance and Business Integrationという授業を履修しました。その授業では、実際の会社を想定して、法的リスクに留まらないリスク及びその対応策についての検討を行い、模擬取締役会でのプレゼンテーション等を行いました。授業の一環ではありますが、企業の内部の立場でリスク検討を行うことは新鮮な経験であり、貴重な学びを得ることができたと思っています。また、その他にも、40年以上実務経験のあるシカゴの弁護士から学ぶコーポレート・ガバナンスや、実務家を含む有識者から提供されるセミナー等、日本のロースクール在学中には学ぶ機会のなかった分野についても学ぶことができています。予習・復習に追われる生活ではありますが、今後の学期にも興味を惹かれる授業がたくさんあるため、勉強内容は非常に充実していると感じます。

教授と学生との距離の近さ

シカゴ大学は、教授と学生の交流を重視しています。そのため、シカゴ大学のロースクールにおいては、他のロースクールと比べて学生の人数が少なく(LL.Mは約75人、JDは1学年につき約190人)、授業も20人から30人程度のものが数多く提供されているほか、例えば、Greenberg Seminarという、1年を通じて教授が学生を家に招いて授業を行うといったユニークな授業もあります。シカゴ大学の伝統的なプログラムであり、教授と学生の仲が深まるよいきっかけともなることから非常に人気が高いのですが、私は運良く冬学期から履修することが決まったため、とても楽しみにしています。

また、教授からも、授業以外の時間に積極的に学生と交流しようとしている姿勢を感じます。例えば、大学では、ロースクールのラウンジでの朝食(Coffee Mess)、授業の合間のワインと軽食(Wine Mess)、放課後の飲み会等の時間が、様々なテーマのもとに提供されており、教授と学生が交流するための機会が数多く設けられています(写真は、Diversity Messといって、世界各国の食べ物と文化を紹介するというテーマで行われたWine Messです。)。

米国以外の学生との交流

LLMのプログラムには米国以外の国で法律を勉強した学生のみが参加していることから、授業は米国法であるものの、米国以外の学生と接する機会の方が自然と多くなります。そのため、LLMのプログラムでは、米国にいながら、米国以外の様々な国の文化にも触れることができます。

実際、2021年度のLLMプログラムには米国以外の29か国から78人が参加しており、私自身、29か国に知り合いができました。これだけたくさんの国の人が集まっていますので、各国の制度、各国からの米国や日本の見え方、自国以外とビジネスをする必要性等について意見交換し、自分の認識を改めることができる貴重な機会となっています。今回の留学を通じて、例えば、日本という国が、私が思っていた以上に好かれており、歴史的にも他国に影響を与えてきたことを感じることができました。もっとも、他国の学生との交流を通じて、日本の良い点だけではなく、悪い点・改善すべき点等に気づくことができているため、今回の留学は、日本を客観視する上でもとても有益な機会だと感じています。

また、これだけいろいろな国から学生が集まっていると、自然と各国の文化を学ぶことができます。例えば、私はスウェーデン人の友人をきっかけに、スウェーデンの移民が多く住むエリアに行き、スウェーデンの文化やシカゴとスウェーデンの関係についての歴史を学ぶ機会を得ることができました。LLMのプログラムの一環としてもNational Lunch/Dinnerというものがあり、各国のLLM生主催のもと、他のLLM生のためにその国の料理をふるまう機会があります。今年のプログラムでは、日本人の学生は手毬寿司やお好み焼き等をふるまいました(写真は、日本人主催のNational Lunchの際に撮影したものです。)。

シカゴの街での生活

シカゴは、五大湖のひとつであるミシガン湖の西に位置する、ニューヨーク、ロサンゼルスに続く全米3位の都市であり、大阪市の姉妹都市です。そして、シカゴには多くの摩天楼があり、摩天楼の合間をミシガン湖から吹き込む風が強風となって流れることから、風の街(Windy City)ともいわれており、冬は非常に冷え込みます。米国第三の都市なのですが、日本人が多く住むエリアはダウンタウンから離れているため、意外にも普段生活するエリアで日本人を見かけることはあまりありません。

シカゴは近代建築が有名であることから、ダウンタウンを流れる川から建築を眺めるリバークルーズが有名です。また、ミシガン湖沿いには、ミレニアムパークという大きな公園があり、夏には、ジャズフェスティバル、ダンスフェスティバル、映画鑑賞会等多くの催しが開催されています。さらに、シカゴには、野球、アメリカンフットボール、バスケットボール、アイスホッケーのチームもあるため、スポーツ観戦も有名です。加えて、シカゴには美術館や博物館がたくさんあり、シカゴ大学の学生だと無料で入場できるようになっています。それ以外にも、ダウンタウンには動物園や水族館、国籍に富んだ多くのレストランやバー等もあり、週末のアクティビティーには困りません。

最後に

実際に留学をしてみて、留学は目的をもってすることが大事だと改めて感じています。LLMの学生の中にも、米国に住んで働き経験を積みたい人、米国の他国に対する影響力に鑑みて一度米国に来たいと考えていた人、米国の文化に興味がある人等いろいろな学生がいて、優先順位によって各人の行動は異なっています。時間も限られている中で、英語力を向上させる、米国法を習得する、多国籍の友人をたくさん作る、米国の文化を学ぶ等目的は何でもよいと思うのですが、自分の目的に向かって優先順位をつけて行動することが重要だと感じています。

また、留学生活の中で出遭う問題に対して、自分なりに試行錯誤してみることは、自分のあり方を改めて考えるきっかけにもなりますし、まさに困難の中で何らかの解決策を捻り出す力という点で実務にも活きる経験だと思います。自分とは違う文化や言語で育った人とのコミュニケーションの中で何を感じるか、背景事情が異なる人とどのように意思疎通できるのか等を知り、また知ろうとすることで、豊かな想像力や実践的な知恵を自然と体得できると思います。

加えて、留学で得られる英語力はもちろんのこと、多様な人間関係を通して得た経験が、弁護士としての業務の幅を広げることも間違いないと信じていますし、このような経験は、ひいては、自分の従前の発想・価値観を見直し、新たな発想・価値観を吸収することで自身の“人間としての幅”を広げる良いきっかけになると思います。
私自身は、LLMプログラムの修了後、米国におけるヘルスケア業務に携わりたいと考えています。そのため、米国の首都であり法規制の中心であるワシントンDCで研修をする予定です。留学の時間はあっという間に過ぎていくため、寂しさを感じることもありますが、実務に戻ることを考えてわくわくする気持ちもあります。限られた時間かつコロナ禍の留学ではありますが、米国留学を通じて、より多くの経験ができるよう、今後も積極的に活動していこうと考えています。

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