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森 勇貴 弁護士(2016年登録)

私は2017年1月にMHMに入所し、以降、プロジェクト・ファイナンス、ストラクチャード・ファイナンス、バンキングといった金融法務を中心に取り扱ってきました。2021年秋からは米国のシカゴ大学ロースクール(LL.M.)に留学し、2022年秋からは英国のケンブリッジ大学環境政策修士課程(MPhil)に留学しています。以下では、現在、所属しているケンブリッジでの留学生活を中心にご紹介したいと思います。

ケンブリッジ大学の環境政策修士課程への留学に至った経緯

事務所では幅広い金融法務の経験を積むことができましたが、なかでも、再生可能エネルギー発電所へのプロジェクトファイナンスや、環境指標と貸出条件が紐付いたサステナブルファイナンスなど、環境分野と密接に関連するファイナンス案件が多かったため、次第に、金融だけでなく環境分野の知見も深めたいと思うようになりました。また、環境分野を取り扱うにあたっては、分野横断的な知識も必要であり、リーガルにとどまらず幅広い視点から理解を深める必要も感じていました。さらに、環境問題については、文字どおり、国境がなく、国際的なルール形成が活発であるため、世界の最新の議論・動向を学ぶ必要も感じていました。
そこで、留学先で様々な角度から環境について学び、「環境×金融」の双方に詳しい弁護士として自らを差別化したいと考えるようになりました。これを踏まえ、留学1年目はシカゴ大のロースクールで米国の環境法、Law & Economicsを中心に学び、留学2年目はケンブリッジ大の環境政策修士課程で欧州の環境政策、環境経済学、国際環境法などを幅広く学ぶことにしました。

ケンブリッジでの学業

ケンブリッジの環境政策修士課程は約20人の少人数のプログラムで、世界中から環境分野に関心のある学生が集まっています。出身国は欧州、アメリカ、アジアの各国に亘り、出身業界も国際機関、行政、コンサル、金融など多様です。日本人は私一人、弁護士も私一人ですが、皆フレンドリーで、居心地よく過ごしています。
環境法の講義は米国よりも歴史的・比較法的視点が強く、Sustainabilityの概念の起源を辿ってみたり、各国の環境法制の共通点・相違点を検討したりする中で、より深い理解を得ることができています。環境経済学の講義では、シカゴ大のLaw and Economicsで得た知識をベースに、より環境問題にフォーカスした形で学ぶことができています。統計学・データ分析等のこれまで馴染みの薄かった分野には手を焼いていますが、これらの分野に明るい友人の力を借りながら、なんとか食らいついています。夏までには修士論文を書き上げることになっていますが、テーマ選び、文献・データの収集方法や扱い方などについて、丁寧な指導を受けられています。
また、学生が参加自由のセミナーも毎日のように開催されており、気候変動、生物多様性、エネルギー、ESG金融など、環境/エネルギー分野の様々なテーマについて、最新の知見を得ることができます。執筆時点(2022年10月)では、気候変動のCOP27と生物多様性のCOP15を間近に控えているため、環境外交の議論が大きな盛り上がりをみせています。
コースが開始して1ヶ月が経ったところですが、わざわざ英国に移って、学びに来た甲斐がある想像以上に充実した内容です。吸収できることはすべて吸収してこようと意気込んで、慌ただしい毎日を過ごしています。

ケンブリッジでの生活

ケンブリッジでは、学部・学科とは別に、31箇所のうちいずれかのカレッジに所属することになっています。各々のカレッジには寮、食堂、バー、図書館、スポーツ施設、チャペル等があり、入学式・卒業式等もカレッジ毎に行われます。上記の環境政策のコミュニティとは別に、カレッジのコミュニティで様々な分野の学生と交流できるのは、とても刺激的です。
私はデンマーク女王マルグレーテ2世や高円宮妃久子さまが学んだGirton Collegeに所属しており、伝統墨守のイングリッシュブレックファーストと、日替わりの昼食・夕食を楽しみながら、他分野の学生と交流しています。カレッジ内には温水プールが完備されており、広大なグラウンドでは毎日何らかのアクティビティが行われています。また、Girtonは街の中心部から少し離れているため、喧騒から離れて自然と親しむには最適です。私の住んでいる家族用の赤レンガハウスは、カレッジ内のリンゴ畑の近くにポツンと建っており、周辺ではリンゴを求めてリスたちが行き交っています。
また、週末には、ロンドンまで50分、欧州各地まで2、3時間という立地を活かし、家族で各地を旅行しています。欧州を旅すればするほど、欧州の中での多様性や、日本や昨年過ごした米国との差異に気付くことができます。

おわりに

日々の業務の忙しさから離れ、興味ある分野の勉強に打ち込めるという贅沢は、何物にも代えがたいものです。また、スマートフォンで海外情報に容易に触れられる昨今ですが、現地で直接体験・交流することの価値も日々実感しています。留学のメリットとして「視野が広がる」とよく言われますが、異なる国籍・業界・学問分野の人々に揉まれるケンブリッジでの生活は、まさにその絶好の機会です。このように得難い機会を得られたのも、MHMでの知的刺激にあふれる業務を経て、実力をつけ、問題意識を深めることができたおかげだと思っています。引き続き研鑽に励み、帰国後にMHMに還元できればと思っています。

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